最終更新日:

価格競争に頼らない新たな価値の生み出し方は?全協総会ダイジェスト

20240401-08-1

全国クリーニング協議会(髙木健志会長)は3月15日にニューオータニイン東京において第55回総会を開催、記念講演を行った。テーマは「いくぜ感動!いくぜ成長!~既存人材で事業成長する方法~」で、講師は感動学博士であり慶應義塾大学院SDM研究所研究員、数社の会社顧問をされている石田泰博氏。

満足を超える感動とは何か。感動を作れる従業員は幸せであり、幸せな従業員は生産性・売上・創造性が高い。感動価値の作り手は、低迷した業界でも事業を様々な軸で定義をして、その軸をずらすだけでイノベーションを起こすことができる。属人センスに依存しない、感動レベルの価値創造・売上増加の構築をしてきた石田氏。講演ではこの考え方・手法につき具体例を挙げて内容たっぷりで話された。

価値創造の話をしよう

私は既存社員と資産を活用し、規模や値域、業種を制約とせず、価値の創造、事業成長を可能とする方法論を考えています。誰かを幸せにする、喜ばせる、感動を作ること、つまり価値創造の仕事自体がウェルビーイングとなります。今日は内容を4つに分けてお話します。

最初は赤の女王です。不思議の国のアリスに赤の女王が出てきます。赤の女王は「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」と言いました。前に行くには2倍のスピードで行かなくてはいけない、まさに会社と一緒なわけですね。だから赤の女王の時代が、今は普通になってきているということです。10年くらい前から「生産性」という言葉が日本で出てきました。

生産性を分子と分母で考えると、分母は労働時間とかコストで、分子はアウトプットの価値です。今まではどうやって分母を削るか、ばかりでした。分母の100を20%削っても80%くらいにしかならない。100÷80は1・25なので生産性が25%上がりました、ということです。削るにも限度がありますよね。

ゆえに、分子をどこまで伸ばすかの議論にそろそろ移りませんか、という話をしています。特に価値を作るという意味では、創造力がある限りいろんなアイデアが出ますので、分子の議論、価値創造の話を事業の中心に据えていく、ということです。

自社の強みを作ろう

では価値とは何でしょうか。人が感じる価値には3つあります。1つめは経済的な価値です。クリーニング屋さんでもありますよね、これを持って行くと50円引きとか、安さ、ポイントが溜まるというところに価値を感じます。2つ目は機能的な価値です。効率が良いとか早いとか、簡単・便利・長持ち、など。牛丼屋さんの「うまい・早い・安い」。うまいと早いが機能で安いが経済です。

でもやはりこの2つの価値で戦っているとほぼ同一化競争になってきて、同一化になると大きな資本の会社が勝ち残っていきます。値引き合戦で利益が出るかどうかという戦いになります。よって3つめの価値ですが、体験価値の方にシフトをしていくのが勝ち筋だということです。体験価値というのは、自社の強み、ストーリーに根差すので、独自性があります。

自分の会社の強みは自分の会社にしかないものですから、この価値をどう作っていくか。なので、この時点で他社と共通の軸で比較がされない。価格なのか、よりきれいになるのか、より早いのか、より利便性が高いのか。同じ軸があるから、そこで競争が起きるのです。その軸自体をずらすのが一番良いだろうという発想です。

満足と感動は違う

感動は期待を超えることです。感動と満足というのは違います。「お客様の満足がわが社の理念です」とか見かけますが、お客が期待している・予想通りを満たすことが満足で、その予想していることを超えるのが感動なんです。

今日はブランディングや事業戦略、人材の採用や育成、パーパス(企業の存在意義)などが出てきます。なぜならその会社だけのストーリーを価値としてどう遡及するか、それが勝ち筋になってくるからです。

感動価値は決して派手なことではなく、アカデミア的には夕日を見ても、こどもの成長でも感動するなど、かなり広く定義をとっています。期待とは何か。お客が自社に何を求めているか、というのをホワイトボードの左側に書いて、その少しでも超えることを右側に書いていく、これが感動レベルです。これは従業員を巻き込んで超えていく。感動の定義は「期待を超える物事に、心を前向きに動かすこと」。特に今はLTV(顧客生涯価値)を上げるとか、グランドを高めるとかいうことが出てきています。

STARの4つの要素

感動価値はSTARの4つの要素が多ければ多いほど感動価値になる、というのがサイエンスに出ています。

1つ目がSence(センス・感情の高ぶり)です。五感です。皆さんの会社やお店で、お客がどの接点で五感を一番感じているのか、クリーニング業なので視覚はきれいな見た目など。また嗅覚、触覚、音はどうか、とか。味覚はちょっと難しいと思いますが、違う五感をいじっていくと、価値になっていくと思います。

2つめがThink(シンク・知見拡大)の要素です。パズルが解けたり、ミステリー小説の犯人がわかると脳みそが喜びます。商品提案で1つだけを提案するのではなく、3つの中から選ぶなど、思考させると体験価値が上がってきます。

3つめはAct(アクト・体験拡大)です。上達とか達成とかです。皆さんのお店も定期的に来られるお客が多いと思うんです。その度に何かが達成されている、一緒に来ているこどもさんの成長でも良いですし、何か達成していることを「見える化」すると、そのお店から離れられなくなります。

最後がRelate(リレート・関係性拡大)です。自分がやりたいようにストーリー作ってお客をよんで、ファンが集まってLTVが高まって少し高くてもみんな買ってくれる。これだと余計な広報戦略も要らないわけです。

このSTARの要素が多ければ多いほど感動価値が上がります。皆さんもお店の接客のサービスの中で、どれだけSTARがあるかどうかを調べて、店ごとで比べるとか、いろんなことができると思います。

20人を2つのチームに分けます。A群の10人にはその商品の価格とか見た目とか材質などを話(物質的な話)をしてもらいます。B群はその物を通してどういう体験や思い出、ストーリーがあったか、という話(体験的な話)をしてもらいます。B群の人たちはすごく仲が良くなって相手に好意を抱きました。お店ではどんな会話をされているでしょうか。物質的な会話ばかりだと相手はつまらない。お客のストーリーをどう引き出して共有していくか、この心理学の話からもヒントになると思います。

定義で変わる戦い方

1984年の論文ですが「基本業務が金属の成形であろうと、ハイテクであろうと、ハンバーガー販売であろうと、超優良企業は自らをサービス業と定義しているのだ」とあります。作られたもので業界分類するのではなく、どういう便益を与えているか、というところではお互い競合になってきているんです。

マーケティングだとシェアオブウォレットやシェアオブマインドとか言いますが、皆さんの会社が目の前の同業他社、同じ地域の他店ということになるかもしれませんが、違う定義をした瞬間に戦い方はずいぶん変わるであろう、ということです。

サービスデザインのところですと2つの理論があって、グッズドミナントロジック(売り手である企業が商品の価値(価格)を決定して顧客に提供・販売し、顧客がその対価を支払って商品を獲得することで「価値交換(所有権の移転)」が行われるという考え方)という物を中心としたロジックで経営をするか、サービスドミナントロジックでサービスで経営するか。

皆さんも戻られたら「うちの会社はどっち?」と聞いてみてください。いろんな人の経営意識の高さをチェックすることもできます。

もう1つの理論は「ストーリーの重要性」ということです。「ストーリーは単なるファクト・事実の羅列より22倍記憶に残る」といいますので、皆さんも経営発表などでお話される時も、事実を淡々と述べるよりはストーリーを話した方が聞いている人には定着しやすいです。

トキメキが必要

トキメキの事例から皆さんも入られると良いと思います。他業界の事例をいろいろ見て、そこからのヒントをぜひ自社に活かすという、トキメキ化に気付かれると成長がはじまります。

収益方向の軸ずらしという方法論ですが、例えばミシュラン(タイヤ)がありますが、タイヤ屋なので、タイヤがすり減れば買い替えられます。今は、ミシュランは省エネ運転のコンサルです。すり減ればすり減るほど儲かる会社が、いかにすり減らないかをコンサルして儲けはじめている。儲け方の方法の軸ずらしをしています。皆さんも事業自体は変えず、儲け方の軸をずらす。軸ずらしは非常に良いんです。なぜなら今の資産と人でできるからです。

20240401-08-2

もう1つ、業界の非常識という型。ボールペンの常識はなにか。ボールペンの常識は「消せない」です。そこで消せるボールペンを作りました。なので、例えば皆さまの業界・クリーニング業界の常識をホワイトボードの左側に書いていって、その真逆を右側に書くだけで、1~2こ使えるアイデアがある可能性があります。

これの事例も好きですね、ケンタッキーがETCで支払いをすることを実証実験していました。要は我々の既成概念の中にETCカードは高速料金を払うものだというのがあります。ドライブスルーをするくらいなので、お金を触りたくないわけです。ケンタッキー自体は何も変わっていないです。支払いで差別化して価値を作っているわけです。支払い方法の軸ずらしの事例は他にもあります。

他にも、熱が出るとポカリスエットを飲んだり、スポーツの前後でカロリーメイトを食べたり。大塚製薬が取ったポジションというのは「お菓子会社以上製薬会社未満」という独特な事業体系を取っています。同業ってなった瞬間に業界が決まって競合になるので価格競争や機能性競争になりがちですが、敵がいない土俵を自分で作るというのは一番強い戦い方です。うちの会社は何業界なんだ?と。どうやってこれを創り出すのかというのをやってみるのも良いと思います。

森永のラムネは売上が2倍になったんです。今までは小中学生をターゲットにしていましたが、受験勉強する高校生や社会人にしたんです。そこでストーリーを作ったわけです。ラムネにはブドウ糖が入っています、ブドウ糖を摂ると脳みその回転が早くなります、受験勉強も仕事も捗りますよ、と。購入理由を作ったわけです。我々もお洋服が汚れたり、季節が変わったらクリーニング、というのは当然の理由なんですが、全然違う理由を、軸をずらすことで新しい需要があることもあるんだろうと思います。

採用について

あとは、採用できない、という話も増えています。ただそれは他の会社と同じ手法をやっているからです。採用条件を他の会社とずらすと良い。

鎌倉のカヤックという会社はリファラル採用(自社の社員から友人・知人を紹介)をやっています。自社の社員に「ファストパス」を渡します。既存社員が「この人良いな」と思ったら、渡すわけです。もらった人は書類選考をパスできます。カヤックという会社は面白くて、今は黒いラストパスというのも作っています。本当にこの人良いなと思ったらその人に渡すと、いきなり社長面接なんです。採用方法の軸をずらしているわけです。価値はどうやって差をつけるか、ということです。採用でもできると思っています。世の中には事例がたくさんあって、そこからどうやってトキメキを見つけるかということになります。

この記事は、有料会員限定です

  • 有料会員登録すると、全ての限定記事が閲覧できます。
  • この記事のみ購入してお読みいただくことも可能です。
  • 記事価格: 300円(税込)

関連記事