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【ハンガー越しの景色 ─ 編集部リレーコラム第2回】熊本の奥地にある現役の共同洗濯場



衣類を美しく蘇らせるクリーニングの原型は洗濯である。まだ洗濯機が普及していなかった昭和前半頃までは、地域の共同洗濯場で衣類を洗濯するのが日常の光景だった。江戸時代に都市が発展して各町で使う井戸が普及して以来、洗濯をしながら「井戸端会議」という名の情報交換が行われてきた。さらにそれ以前の日本では、川辺に集まって、洗濯をした。井戸端会議ならぬ川端会議である。

熊本県の片田舎、南小国町の奥地にある満願寺温泉の川辺には、いまでも現役で使われている共同の洗濯場がある。近所の住人がお米を研いだり、野菜を洗ったり、洗濯をしたりと、日常生活で使っている。志賀瀬川の支流、満願寺川に面した、静かな共同洗濯場だ。

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満願寺川に面した共同洗濯場

満願寺温泉は、承和14年(847年)に弘法大師によって開湯されたと伝えられ、筑後川支流の志津川沿いに位置するこの地区は、志津の郷と呼ばれている。文永11年(1274年)の元寇の役の際、北条時定が国土安泰を祈願して満願寺を建立した。温泉の名の由来となっている。満願寺温泉の共同洗濯場は、その寺のすぐ近くにある。

共同洗濯場の隣には人間が入れる温泉があり、200円で利用可能だ。だが、洗濯場が使われているときに入浴するのは、ちょっと勇気がいるだろう。温泉に詳しい評論家の巌谷國士は「温泉というものは、出てきたときには誰もが違う人間になっている、一種の通過儀礼の要素がある」と語る。満願寺温泉の共同洗濯場は、衣類が通過儀礼を経て、新しく蘇る場である。

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生活用の洗い場で入浴してはいけない

地元の人に聞いたところ、かつては川上にも川下にも共同洗濯場があったという。洗濯機が各家庭に普及してから、共同洗濯場を利用する頻度はめっきり減った。しかし、お湯で衣類を洗うのは気持ちが良いので、いまでもときどき利用するらしい。志津の郷では、衣類の洗濯は家事のためではなく、気持ちの良い時間を過ごすために行うことのようだ。(石井窓呂)

(アクセス)満願寺温泉・熊本県阿蘇郡南小国町満願寺2299、福岡空港からクルマで2時間

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