• 「時間」と「価格」の選択肢を提供し、稼働率上昇。ダイナミックプライシングのデータを公開/wash+
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「時間」と「価格」の選択肢を提供し、稼働率上昇。ダイナミックプライシングのデータを公開/wash+

千葉県浦安市を中心にコインランドリーを運営する㈱wash-plus(ウォッシュプラス・高梨健太郎社長)は、コインランドリー機器メーカーの㈱山本製作所と共に、コインランドリー業界初となる専用アプリ「smart laundry」(スマートランドリー)を開発。

空き状況の表示/洗濯機予約機能/運転コース選択/ドアロック/ブラインドモード/運転終了通知/キャッシュレス決済/領収書発行など、便利な機能を20以上搭載し、2023年11月現在、323店舗で32万人を超える利用客がダウンロードしている。

このほど、産業界ならびに行政機関などの業務における事業創造、効果的ビジネスモデルの構築・促進、生産性向上等、“ITを高度に活用したビジネス革新”に顕著な努力を払い成果を挙げたと認めうる企業、団体、機関および個人に対して贈られる、公益社団法人企業情報化協会主催の「第41回IT賞」を受賞した(顧客・事業機能領域)。

2023年4月よりスマートランドリーに蓄積された店舗ごとの過去のビッグデータと気象データをAIが自動分析し、需給の予測を基に価格を決定する「ダイナミックプライシング」(DP)を直営5店舗で運用開始。今回のコインランドリーEXPOにおける提案内容の中心としている。

◆オフピークの利用増加で稼働率アップを図る

コインランドリー経営における課題の一つに挙がるのがランドリー機器の稼働率。同社によると、1日の平均的な稼働率は8.13%で、朝10時~11時前後がピーク。深夜帯に向かって緩やかに稼働率は下がっていくという。そこで同社はオフピークの利用を増加させることで稼働率が改善できると考えた。

これまでの経験則から雨天時に売上が伸びることも分かっており、気象条件とコインランドリーの利用における相関関係に着眼。①利用タイミング(月別・曜日別・時間帯別の利用傾向等)、②会員データ(年間利用回数や機械の利用傾向等)、③稼働率(時間帯別稼働率、機械比率別の稼働率等)などスマートランドリーにより蓄積されたビッグデータと④気象データを掛け合わせ、需給の予測を基に価格を決定するシステムを構築した。

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価格は【0時00分~5時59分】、【6時00分~8時59分】【9時00分~19時59分】、【20時00分~23時59分】の4つの時間帯に分けられており、1週間前から「価格予報」をアプリやランドリー機器のモニター画面で告知。気象データが発表されるたびに価格は随時変動し、前日正午頃に表記された価格が最終決定となる。あらかじめ告知することで、お得な時間を狙った来店が可能となり、ピークシフトを図る

◆24時間内にランドリー機器が動く時間を伸ばす

直営店全14店舗のうち5店舗にてDPを導入し、残る9店舗は導入せず、データの比較検証を2023年5月より開始。運用開始前に全店舗で値上げを行った影響で、2023年5月~8月まで全店の売上が前年よりも上昇した。しかし、DPを導入していない9店舗では利用回数が平均8%減少。対してDP導入店では平均7.6%の利用回数上昇。値上げ時の稼働率減少に対して有効な対策であることも分かった。

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値上げを実施したが、DP導入店では利用回数が増加。一方でDP未導入店では利用回数が減少した

さらに時間帯別に稼働率を検証したところ、日中時間帯の稼働率はやや減少したものの、深夜・早朝・夜間のオフピーク時間帯における稼働率は大幅に上昇。その結果、1日の全体的な稼働率も上昇し、ピーク時とオフピーク時の山谷の差が小さくなっていることもグラフから読み取ることができる。1日あたりの稼働率は2022年5月~8月までが10.6%であるのに対し、2023年は12.5%と、こちらも上昇している。

高梨社長は、「ダイナミックプライシングのポイントは、来店時間と価格の選択肢を提供することで、1日あたりの稼働率を上昇させるところにある」と意図を話す。「24時間以内にランドリー機器が動く時間」という高梨社長の稼働率に対する考え方がベースとなって生まれたのが今回のDPなのだ。

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DPによる時間帯別稼働率の変化。オフピーク時の稼働率が上昇していることが分かる

DPのシステムは、「smart laundry」導入店に向けてまもなく販売開始予定とのこと。

稼働率向上の切り札として、また競合店舗との差別化戦略として、コインランドリーを待ちの経営から攻めの経営に変える新たなツールと言えそうだ。



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