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【連載 Fashion Quality Maintenannce】クリーニング店とF・メンテ店の違いを明かす
新業態をつくる機運高まる!
従来を捨て、クリーニング業の新業態をつくる機運が次第に高まってきています。とりわけ、衣服のファッションメンテナンス事業化への息吹を発散させて止まない㈱レッツリフォームは、もはや皆様もご承知のことと思います。本誌連載『宝の山を掘り起こそう!』においても、時には既存業界に対する厳しい提言も。そうしなければわが業は時代の潮流にのみ込まれ、埋没しかねない現況を伝えてくれています。
そこで本誌では、わが業界において初めてFQM(ファッション・クオリティ・メンテナンス)論を説いた濤川進(なみかわすすむ)先生の論説を再度掲載したいと思います。おそらくは、レッツリフォーム高柳社長が実践行動派とすれば、FQM論はその行動を正確に裏付ける理論武装の役目になるだろうと思っております。
濤川氏は、昭和8(1933)年生まれ。VM改善の創始者として有名な児玉龍介氏に師事。後に全ク連の業界ビジョン策定委員会委員として携わり業界事情に精通。そして誰も疑問さえ抱かなかったクリーニング業界とファッション・アパレル業界との構造的矛盾を初めて解明。さらに衣服の社会的な品質保証制としてのFQM業態を提唱。
国民のための豊かな衣生活ビジョンを説き、精力的な執筆と講演も。さながら〝目から鱗〟の刮目すべき論説を多く発表したが、往年は現在業界ほどの危機感がなかった時代背景もあって、ごく一部には熱烈な賛同を得たものの大きな業界動向までには至らず。遺憾ながら濤川氏はすでに亡くなられましたが、数多くの遺稿の大半は現在、ゼンドラに委託され大切に保管されています。その肝要な部分を次回以降より、わかりやすく明かしたいと思います。
ところで、ずっと以前の話ですが、こんなエピソードがありました。ある経営セミナーの席上で参加者のクリーニング店主が涛川講師に以下のような質問をしていました。
『一般家庭で洗える衣服が増えてクリーニングに出さなくなる。今後どう対応すればいいのか』と問う店主。涛川氏は即座に次のように話し始めました。―今の時代、お風呂屋さんがなくなってもほとんど困らない。家庭に風呂があるから。洗える衣服が増えても誰も困るわけでもない。家庭洗濯機があるから。
しかし、病気で困っている人が病院に駆け込むように、たとえ家庭で洗えるとしても衣服にも「病気」があることが判れば、衣服の病院に駆け込むしかない。ここのところを業者は知っておくべきことで、お客様にも伝え、教えていくことが大事だと濤川講師は話しました。また、その衣服の病気とはどんな状態のことなのか。衣服の汚れやシミはもとより、破れ、ほつれ、縮み、スレや色落ちなどもろもろ、あるいはファッション性を損ねた着崩れ、いせ込み仕上げを要する背広の型崩れなど、これらを総じて衣服の病気と述べていました。
要するに、これから先のクリーニング業は、家庭洗いと競合しあう衣服の清潔再生業でなく、衣服全般の再生保全業(メンテナンス事業)への起死回生の進化と発展へ。そうなれば家庭で洗える衣服が多くなるとかで心配しなくていいはずだと、店主に語りました。そういう職業に生まれ変わるべく、今後のクリーニング業はいち早く脱皮すべきというのが濤川氏の主張でした。
以下、新業態システムの考え方について、今後検討すべきことを濤川論文より引用し、まとめました。
(1)なぜF・メンテナンスとクリーニングを区別するのか。それは人が身体を洗うこと(清潔再生=浴場等)と病気を治す(身体の機能再生)こととは基本技術は別のもの。似て非なるもので同一視してはならない。
(2)ではなぜ、今日までその区分がなされなかったのか。
①クリーニング業界自体が自己を洗浄業と定義したため、衣服をおしゃれな概念でなく、衣服を単なる被洗物として捉えたため、汚れの変化と繊維素材の変化にのみ対応してしまったこと。
②汚れ落としとシワ伸ばしというモノサシだけで、衣服の再生保全を家庭洗濯と同じ概念で広めてしまったこと。
③ファッション・アパレル界のアフターケアについて、そのクレームまで負い、限度を超えたものまで商品取り換えで済ましてしまったこと。
④衣服の仕様書や衣服の品質保証システムは全くないことを消費者までも何の疑問を持たなかったこと。これが現在もなお続いていること。
なお、次回以降はクリーニング店とF・メンテナンス店との違いを「店舗」、「工場」、「営業」別に50ポイントほどにまとめて逐次掲載していく予定です。驚くほど鮮明にその違いを箇条書きにして掲載します。乞うご期待!
本誌8月1日号表紙は海外のクリーニング店舗。目を引くのはウインドーに掲げられたCLEANERS&TAILOR。テーラーとはメンズ仕立てを意味するが衣服メンテナンス業を兼ねた店舗なのでしょう
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