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クローズアップ:Crowe Watanabe CT・渡邊代表に聞く クリーニング業の事業承継・M&Aのポイント

需要減退やコスト高騰、人手不足などで厳しさを増すクリーニング業界。業界では大手企業がM&Aを活用して営業基盤を広げる一方、小規模事業者では後継者問題を抱えるケースも少なくない。こうしたなか、事業承継の選択肢としてM&Aに踏み切る経営者も増えている。長年にわたりクリーニング業界のコンサルティングを手掛けてきた㈱Crowe Watanabe CT代表の渡邊芳樹氏に、業界におけるM&Aのポイントを聞いた。

㈱Crowe Watanabe CTの渡邊芳樹代表

渡邊氏によると、買い手側がまず重視するのが「商圏」と「直営店の比率」だという。

「商圏の中で競合相手がどのような価格設定をしているのか、また、ダウンジャケットや冬物コートなど、単価の高いサービスを利用してくれるお客様がどれだけいるのかも重要です。直営店については、売上管理や従業員教育、店内環境など、本社の目が行き届いているだけに印象がいい」

近年のM&Aでは、既存店舗を取得することで新規出店の手間や人材採用を抑えながら営業基盤を拡大する動きも見られる。大手クリーニング会社が首都圏の取次店を複数回にわたり譲り受け、関東での店舗網を広げた事例もある。

一方、クリーニング業ならではの注意点として渡邊氏が挙げるのが、工場の「土壌汚染」だ。

「工場を基本にクリーニング店がパッケージになっているという見方をするなら、土壌汚染への対応は見逃せません。過去にその土地や工場で溶剤を使用していた場合には、買収後のリスクまで考える必要があります」

実際、クリーニング店の事業譲渡では、過去に使用した溶剤による土壌汚染や建築基準法上の問題がデュー・ディリジェンスで判明し、株式譲渡から事業譲渡へとスキームを変更した事例もある。一方、土壌汚染への対応を含め、 経営者が経営指針に基づいてしっかり管理している会社は、店舗従業員への教育も行き届いているケースが多いという。

また、M&Aを足掛かりに東京などの大都市圏へ進出することは、商圏人口の確保だけでなく、企業内の人材交流という面でも意味がある。

「例えば東京の会社が地方の会社をM&Aした場合、若手社員が地方への転勤を進んで選ぶかというと難しい。一方、地方から東京への転勤なら、人員の交代も比較的スムーズに進められます」

では、会社を譲渡する側は何を考えるべきか。渡邊氏が指摘するのが、後継者候補の「経営者としての適性」だ。 

仮にM&Aで数十億円の譲渡価格が提示された場合、厳しい経営環境の中で相続税を負担してまで子どもに会社を承継させることが本当に最善なのか。重要なのは「親族だから継がせる」のではなく、次代の経営者として事業を成長させられるかを冷静に見極めることだ。

「会社を継がせたものの、株式は創業者である親が持っているというケースも多い。しかし、事業を縮小していけば株価は目減りしていく。そこをどう判断するかで、踏ん切りがつかない経営者の方も多いのではないでしょうか」

M&Aは単なる会社の売買ではない。長年培ってきた技術や顧客、従業員、地域で築いてきた信用を次代へつなぐための手段でもある。だからこそ、M&Aをするか否かを決める前に、「自社にとってどの選択肢が最も良いのか」を見極めることが重要だ。その判断には、税務や財務、事業価値、環境面など多角的な視点が求められる。専門的な知見を持つコンサルティング会社に早い段階から相談することが、より良い事業承継への第一歩となりそうだ。

◆㈱Crowe Watanabe CT

2000年開業、税務・会計や事業承継の支援を行う税理士法人・コンサルティンググループ。資産と事業の承継整理に最適なプランを提案。長年関わるクリーニング業界をはじめ、税務・財務・経営の専門家として、経営課題に対して継続的なサポートを提供する。

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