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ローコスト高生産工場の作り方
持続可能なリネン工場を目指して
●進む気候の極端化
最近は毎年夏がくると酷暑を警戒しています。今年は2024年、2025年の記録的な猛暑と比べると、東日本は酷暑が抑えられましたが、西日本は連日35℃以上で、最低気温も下がらず、大変暑い夏になりました。
特に地震の被災地である熊本では連日40℃に迫ろうかという猛暑で、停電も重なり大変な思いをされた方が多くおられました。地震の被害だけではなく、その後の酷暑も熊本の人たちを苦しめました。真夏に地震や津波の災害が起きて電気が喪失すると、その二次被害の方が大きいかもしれません。
酷暑の後には連日の大雨で、地球温暖化の結果、極端な天候が起きるようになりました。酷暑が比較的抑えられた東日本ですが、線状降水帯が発生し、記録的な雨が降り続き、千葉では車両が冠水するなどして10名以上の方が亡くなる事態になりました。
大雨は前線上の特定の地域に集中して、日照率も例年の3分の1しかない地域も多く、収穫前の農作物にも甚大な被害を及ぼしています。最近の気候は、暑い時は記録的な暑さとなり、雨が降る時は極端な豪雨となるなど、甚大な被害を集中させます。
今年は台風の発生数も25号を超え、毎週のように沖縄を通過して中国大陸にも多大な被害を及ぼしています。中国大陸の被害報道は、国外に十分伝わらない場合もありますが、毎年相当規模の人的・経済的被害が生じていると考えられます。自然災害時には、国や政治体制を超えた人道的な支援が重要です。

●ESPRが変える繊維産業
地球温暖化対策の一環として、EUが定めたエコデザイン規則(ESPR)が話題になっています。持続可能な製品作りを目的とした規則で、ESPRの基準に沿ったアパレル製品の製造への対応が必要になります。循環型経済への転換を目指して、耐久性やリサイクル性に加えて修理性が求められています。
また、売れ残り品や在庫品の廃棄を制限・禁止する規定も盛り込まれています。メンテナンス性を高めるためには、衣類を長持ちさせる素材を選び、クリーニングやシミ抜きのようなケアが大切になってきます。現在、ユニフォーム業界やランドリー業界で取り組まれている製品の長寿命化が、今後ますます重要になってきます。ESPRがヨーロッパから世界へ広がっていく背景には、繊維産業がグローバルなサプライチェーン(供給網)で結ばれているという現実があります。
●DPPが求める製品情報
ESPRでは製品が具体的に、どのような素材で、どのように作られ、どのようにリサイクルされるのかという情報をデジタル上で公開する「デジタル製品パスポート(DPP)」の導入が求められています。これらの情報をまとめるには、製造メーカーも生地の段階から正確に情報を収集・提供することが重要です。日本のアパレル企業や繊維商社も、これらのEUの基準に合わせた製品作りを行うことが必要となるでしょう。製造側に耐久性やメンテナンス性などの要件が定められるようになると、使用に耐えうる洗濯回数、洗濯方法、温度、洗剤・助剤など、従来は洗濯業者側の機密情報だった、耐久性の研究と実験がより高い精度で求められます。
それらの情報が徐々に集まると、製品の寿命や品質維持に不可欠な情報が消費者とも共有される仕組みが生まれます。現在、リネン工場で実践されている洗濯温度、濯ぎ回数、洗剤の適正使用条件等のノウハウが公にされると同時に、それらの洗濯条件を適切に管理することこそが、洗濯時の省エネ、省水、適正な洗剤・助剤の使用などに直結する価値ある情報となるでしょう。

●リネン業界への影響
ESPRは、繊維メーカー側にさらなる製品の耐久性を求めることで、業務用リネン材の素材や編み方そのものも変えていくきっかけになると思います。リサイクル性を考えると、混紡製品より単一素材の需要が高まるかもしれませんし、丈夫なポリエステル・綿の混紡比率や番手を追求した新たな製品も出現するかもしれません。
デジタル製品パスポート(DPP)で情報開示義務を負うのはあくまでも繊維製品そのものの情報です。しかし洗濯業界に対しては、繊維製品情報だけではなく、ホテルや病院などのサステナビリティへの要求が厳しいグローバル企業からは洗濯工程に必要な水の使用量、エネルギーの使用量、CO2の排出量などの情報提供を求められる可能性が高まるでしょう。それらの情報をしっかり把握して、エネルギー使用量を明らかにしておくのが、生き残りを目指すリネンサプライ業界にとって、進むべき方向のひとつといえます。
●リネン工場の対応
ESPRへの対応とは別に、品質やコストを重視するリネン業界では正確なコスト計算が求められています。最近のリネンサプライ工場ではバッグシステムが導入されていますが、バッグシステムはマテリアルハンドリングだけではなく、入荷・仕分け・洗濯工程・乾燥・たたみの各工程間の情報を過不足なく伝達し、無駄をなくすための重要なツールになっています。当初はコンベアの代わりに使われはじめたバッグが、洗濯機の処理能力に合わせて、入荷してきた使用済みのリネンを客先別、種類別、工程別に分けて、出荷口に滞りなく工場内を搬送するシステムに進化していきました。
そして、各工程間の洗濯物の搬送という単純な役割から、搬送したリネンの種類に合わせた洗い方や乾燥方法の指示を伝達しなければなりません。それらの情報をまとめていくと、一日に使用した水・熱・洗剤等の情報が蓄積していきます。省エネ装置との情報連携がはじまった頃から、バッグシステムの役割は拡大してきて、工場内の製品の流れの管理とともに、使用したエネルギーを可視化できるようになりました。現在は連洗機の能力に合わせたシフト管理ですが、ライン全体の状況が把握できるようになると、定量処理を妨げている原因も見えてくるようになり、安定した製品生産が可能になります。
●上海展示会のテーマ
今年の上海展示会Texcare Asiaでも工場内の各機械単体の性能だけではなく、洗濯・仕上げ・物流の各工程をデータで連携させ、工場全体の処理能力を上げる試みがひとつのテーマです。補助的な役割だったRFIDによる個別管理が、工場の生産管理だけではなく、在庫管理への実用的な活用方法などが提案されています。
AIの本格的な実用化は、まだ十分な段階には至っていないようですが、客先在庫管理や配送管理などへの応用が実用的だと思われます。
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