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コインランドリー刑事
森の守り神が経営するコインランドリーに行ってみた
知っているようで知らなかった、東京の西のほう
都心から車で2時間、本州部の東京都で唯一の「むら」、檜原村。
この村に、小さなコインランドリーがある、という情報を入手しました。
どんな村なのか、私のつたない文章よりも、檜原村のホームページから引用したほうが良いでしょう。
「檜原村は、東京都の西に位置し、一部を神奈川県と山梨県に接しています。面積は105.41平方キロメートルとなっており村の周囲を急峻な山嶺に囲まれ総面積の93%が林野で平坦地は少なく、村の大半が秩父多摩甲斐国立公園に含まれております。
村の中央を標高900m〜1,000mの尾根が東西に走っており両側に南北秋川が流れていて、この川沿いに集落が点在している緑豊かな村です。」(村の概要 | 檜原村ホームページ)
65歳以上の人口が5割以上の自治体を「限界自治体」と呼びますが、檜原村は2025年の統計で総人口1923人に対して65歳以上の人口が1032人の53.6%(年齢5歳階級別男女別人口の推移 | 檜原村ホームページから独自に計算)と、限界自治体となっております。
村の概要にありましたとおり、ほとんどが林野で、見渡す限り木の生えた山。
オレはなんて表現力がないんだろう・・・でもそう言うしかないって感じです。

見渡す限り木の生えた山
んでもって、その「木の生えた山」ってのは「間伐」という事を絶対にしないといけないわけなんですが、この「間伐」の重要性について、林野庁のホームページにはこう書いてあります。
「間伐とは、森林の成長に応じて樹木の一部を伐採し、過密となった林内密度を調整する作業です。間伐を行うと、光が地表に届くようになり、下層植生の発達が促進され森林の持つ多面的機能が増進します。間伐を行わず過密なままにすると、樹木はお互いの成長を阻害し、形質不良になります。また、残った樹木が健全に成長することにより木材の価値も高まるため、間伐は大変重要な作業となります。」(間伐とは?:林野庁) 引用ばっかりで申し訳ないんですが、そのとっても大切な作業である「間伐」を仕事にしている方が、今回ご紹介するコインランドリーのオーナーなんです。
いわば、「森の守り神」がやってるコインランドリー、と言っても過言ではないんですよね。
今まで確認していた情報では、東京都のいちばん西にあるコインランドリーは、JR五日市線の武蔵五日市駅から徒歩20分のコインランドリーさわやかピュア五日市店(東京都あきる野市高尾56-3)です。
その日は秋晴れで空も高く、絶好のドライブ日和。「森の守り神がやってるコインランドリーなんてステキやん・・・ちょっと行ってみよう」なんていう軽い気持ちでレンタカーを借りて行ってきました。
以前は一番近いコインランドリーに行って帰って3時間
東京最西端のコインランドリーがあるのは、パン屋や宿泊施設が並ぶ「たなごころVillage」の一角です。
駐車場に着くと、「すぐそこ!」と書いてある案内看板。
すぐそこって言っても80mです。
この辺では80mはすぐそこなんですね。

すぐそこ!(80m)
車を降りてすぐに気がつくのは、川のせせらぎの音。
そして、その音を遮るのが山の斜面だけなので、せせらぎの音が奥深く響いて聞こえます。
いやー大自然のど真ん中って感じで、実に癒されますねー。
この川、どこに流れ着くんだろう?多摩川かな?あ、秋川渓谷って聞いたことあるなあ、秋川かな?これが秋川?まあどうでもいいや! もともとチャランポランなのに、さらにチャランポランになっていく自分がいます。

川の音を聞くと、いろんな事がどうでもよくなる
そんなこんなで、あっというまの80m、「カフェ&パン サウナ・宿泊受付」と書かれた看板のある、たなごころVillageに到着。
煙突からは、ピザを焼く薪釜から出る白い煙がモクモクとたなびき、薪の燃える良い香りが漂います。
いいっすねー薪の燃える匂い。
幼い頃、実家が薪釜の風呂だったのを思い出し、とても懐かしくなりました。
まあ銭湯で今も薪窯のところあると思いますが、あるのかな?もう無いかな?どうなんだろう、まあどうでもいいや!

煙突から出る煙を見ると、いろんな事がどうでもよくなる
さて、取材で来たので、ちゃんとインタビューしたいと思います。
コインランドリーがあるのは、「たなごころVillage」内の宿泊施設「ひだまり」の入口にある、間口3m、奥行き2mと、1坪にも満たないスペース。
アクアの洗濯乾燥機Mサイズ(HWD-7177AGC)が1台と、アクアの2段スタック乾燥機Mサイズ(HCD-6147GC)が1台、千円札のみ利用可能な両替機、という構成の超コンパクトなコインランドリーで、屋号は「たなごころランドリー」。
熱源はもちろんLPガス。
このかわいいコインランドリーのオーナーは、地元でLPガスと灯油の販売、林業、飲食業(自家製酵母パンとPIZZA)、宿泊業(コテージ・サウナ)を行う会社「株式会社井上店」の井上佳洋社長(以下井上さん)。
2024年の3月に、このコインランドリーをはじめたそうです。
さっそく、コインランドリーをつくった理由を聞いてみました。

ピッカピカの東京都最西端にある、たなごころランドリー
デカ:最初にコインランドリーを作ろうと思ったのは、どんな出来事がきっかけだったんですか?
井上さん:住民から「ほしい」という声があったんだ。具体的には、近所の子連れのお母さんが、洗濯物が乾かない時にあったらいいなと言ってたね。ただ、「ほしい」って言ってきた人はその人一人だけだったけど。
デカ:宿泊施設「たなごころVillage」で発生するリネン類の洗濯も、このコインランドリーでしているんですか?
井上さん:もちろん。
デカ:このコインランドリーが出来る前は、そういった洗濯はどうしてたんですか?
井上さん:クリーニング屋さんに頼んだり、一番近くのあきる野市のコインランドリーまで妻が車で洗濯しに行ってたよ。
デカ:そこまではどのくらいかかるんですか?
井上さん:1時間。それで洗濯に1時間かかって、帰って来て、3時間かけてた。とても不便だったね。
ちなみに、あとで奥様に聞いたら、そのコインランドリーは先ほど書きました、コインランドリーさわやかピュア五日市店だった、とのこと。
デカ:3時間の損失はでかいですよね。
井上さん:だから、このコインランドリーを作ろう、と言った時は、妻は大喜びしたね。「喜び」どころじゃないよ、「大喜び」だよ。
「遠くまで行かなくて済むようになった」。これは大きな恩恵です。あきる野市のコインランドリーさわやかピュア五日市店までは、カーブの多い山道が続きますから、運転の不安から解放されますし、ガソリン代の節約にも繋がります。特に冬季の路面凍結時、積雪時などには、このコインランドリーは有難みを増すことでしょう。
実際、自家製天然酵母パンと、薪窯焼きピザ店を営む奥様の井上百合子さんはとても良い笑顔。

たなごころランドリーの料金。羽毛布団専用コースもある
5百万円の投資、2年後の今はもちろん赤字
デカ:投資額や維持費に対して、売り上げは見合っていますか?
井上さん:初期投資は500万円かかった。売上は投資に対して、まったく見合っていない。完全に赤字だね。でも、最初から採算度外視で始めたからね。採算度外視って、「儲かるか儲からないかわからないけど始める」じゃなくて、「完全に儲からないと分かってて始める」って意味だからね。
デカ:このコインランドリーの客層はどうなってますか?
井上さん:宿泊施設のリネン類の洗濯、つまり自己利用と、近所の住民の方に利用していただくのがほとんどだね。
デカ:宿泊者のお客様は使わないんですか?
井上さん:連泊しなくちゃ、使わないね。あと、連泊してても天気が悪い日が続く時、とかだけだよ。

わずかなスペースだけど、たたみ台もある
頼まれると断れない性格、儲けは後から付いてくる
井上さんにとって、商売とは何なのか。住民の暮らしとどう関わっていきたいのか。
デカ:燃料販売や林業、パン屋、宿泊施設など、さまざまな事業を手掛けていますが、共通する考え方はありますか?井上さん:「みんなにとって役に立って、喜んでもらえるかどうか」を考えて事業を継続したり、新しく始めたりしている。儲けは後から付いてくる。
デカ:さまざまな事業を手掛けていますが、地域の人に「これを作ってほしい、これをやってほしい」と頼まれると断れない性格なのでしょうか?
井上さん:そう。
デカ:事業を続けるうえで、一番大事にしていることは何ですか?
井上さん:「みんなにとって役に立って、喜んでもらえるかどうか」
デカ:このコインランドリーをつくって、一番うれしかったのはどんな瞬間ですか?
井上さん:今まで妻があきる野市まで3時間かけてコインランドリーに行っていたので、妻がとても喜んだ事。
デカ:井上さんにとって、村で商売を続けるとは、どういうことでしょう?
井上さん:子どもの時に、地域の人にとても世話になったから、この地域に恩返しするために、みんなの役に立つことがしたい。

注文してから作って焼くのに、わずか10分ほどで焼き上がる薪釜焼きピザ。この日は自家製アンチョビとジャガイモのピザを焼いてもらった
妻がとても喜んで、コインランドリーを作って良かった
デカ:この2年間で、「やってよかった」と実感した出来事はありますか?
井上さん:今まで妻があきる野市まで3時間かけてコインランドリーに行っていたので、妻がとても喜んだ事。
デカ:逆に、思ったようにいかなかったことは?
井上さん:特にない。
デカ:もし今、もう一度開業するかどうかを選べるなら、また始めますか?
井上さん:今まで妻があきる野市まで3時間かけてコインランドリーに行っていた事を考えると、こんなに便利な事はないから、もし今、もう一度開業するかどうかを選ぶなら、もちろんまたコインランドリーを始めると思うね。

笑顔がとってもチャーミングな、奥様の井上百合子さん
井上さんは、インタビューで「頼まれたら断れない性格」だから、この村で様々な事業を展開して来た、と語りました。
しかし、私は思うのです、コインランドリーだけは500万円かけて赤字覚悟でも、奥様の苦労を減らすために作ったのだと。
とっても素朴でめちゃくちゃ美味しいビザを食べながら、絶対にそうだと確信しました。
それと、案内してもらった「たなごころVillage」の宿泊施設は凄まじい清潔感でして、冷蔵庫に電子レンジやガスコンロで自炊も可能と充実の設備、サウナも普通のサウナとバレルサウナの2本立てだし、パーベキュー場や焚き火台や利用者がピザを焼く釜もあったりして、奥様も「ぜひ、ぜひ!泊まりに来て!!」と力説してた事をお伝えします。
移住する方も増えてきてるそうですし、今後が楽しみな檜原村なのでした。
たなごころランドリー
東京都西多摩郡檜原村人里2100-1 たなごころVillage
営業時間・9:00〜17:00
定休日・月曜日と火曜日(パン店たなごころに準ずる)