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本誌独占・中園ホールディングス㈱・中園博也社長インタビュー(後編) 「クリーニング業の強みを起点に多角化を推進」
業界全体に閉塞感が漂う今、クリーニング業の可能性をどう広げていくべきか。中園ホールディングス㈱・中園博也社長は、クリーニング業で培った機能やノウハウを生かし、理美容や農業、不動産など多彩な事業を展開し、海外にも進出している。即断即決を信条とする経営姿勢や、無人化・自動化への投資構想、業界の活性化に向けた次なる挑戦について聞いた。
多角化を進めるグループ経営
―クリーニング事業以外の多彩な事業についてお聞かせください。
中園社長 2001年に始めた理美容事業「サンキューカット」は現在、全国260店舗を展開中です。今年は年商100億円を見込み、7月には新しいテレビCMを放映しました。CMのコンセプトは、サンキューカットがお客様の「満足」という作品を生み出し、スタッフは「アーティスト」であるという当社の考え方です。「アーティスト第一主義」を打ち出すことで優秀な人材が集まっており、技術者のいる店としてお客様に安心して利用していただけます。理美容業界でも人材不足が話題になっておりますが、私どもでは逆に、人材を他社にお貸ししているような状態です。
サンキューカットを始めた動機の一つは、理美容師の待遇を良くしたいという思いでした。理美容業界はクリーニング業と同じ生活衛生関係営業です。国家資格を持っているにもかかわらず、所得が少なく保険にも加入していない人が多いと知り、そうした状況を変えたいと思ったのです。高い技術や接客力をもっている方に、家を建て、子どもを大学に通わせられるようになってほしい。そのためには、業界全体の底上げを率先して進めなければならないと考えました。
―最近では、さらに新たな分野へ進出されていると聞きました。
中園社長 今、特に力を入れているのが農業です。米、ニラ、栗、スイカ、ブドウなどを生産しています。
米は、農薬・除草剤・肥料を使わずに育てており、ミシュランの星を獲得した和食店から注文が来るほどの品質です。ニラは、70メートルのビニールハウス170棟で生産し、従業員延べ30人で1日約900キログラムを出荷しています。主な取引先は餃子チェーンやラーメン店で、大阪以西では、ほとんどの店舗に当社のニラを使っていただいています。ブドウは、今年6月にオーストラリアのミルデューラ市(ビクトリア州北西部)にある東京ドーム2個分(約9.3ヘクタール)の農園を購入して始めた事業です。生食用を栽培し、シンガポールやマレーシアに輸出します。初年度の売上高は約1億4000万円の見込みです。

1本70mの畝が並ぶニラ畑

オーストラリアのミルデューラ市のブドウ農園
―農業以外では、どのような新事業が動いていますか?
中園社長 米国ロサンゼルスに、不動産管理・コンサルティング会社「GPO INTERNATIONAL CORPORATION」を設立しました。拠点のトーランス市はとても治安が良く、教育環境にも恵まれています。良い物件が出ればすぐ購入できる準備を整えました。背景には国内のインフレがあります。インフレが進めば貨幣価値も下がるため、資産を株式、債券、不動産などに分散投資する方がよいと判断しました。預金も、金利面で有利な場合がある海外口座を利用し、日本円、米ドル、豪ドルに分散しています。
―海外展開で苦労されたことはありますか?
中園社長 ブドウ事業をはじめるにあたり、オーストラリア法人を立ち上げましたが、法人登記も土地購入も日本とは手続きがまるで違います。ホールディングスの経営状況を公認会計士を通じて領事館に伝え、何度も書類を提出して、ようやく口座を開設できる。それほど海外では外国資本への審査が厳しいのです。それに比べると、日本の審査は緩すぎるのではないかと心配になったほどでした。
即断即決の経営とクリーニング業の強み
―新事業に加え、他企業から経営への参画を誘われる機会も少なくないと思います。事業を選ぶ際のこだわりはありますか?
中園社長 母から言われていることでもありますが、飲食店経営など「人の胃袋に入る仕事」はもうやらないようにしています。農業は、胃袋に入る前の食材を生産する仕事ですから良いとして、それ以外、どのような事業にも、クリーニング会社は取り組むことができると考えています。
―クリーニング業は、小売りサービス、クレーム対応、生産、物流、店づくり、販促、人材確保まで幅広い機能を網羅していますからね。
中園社長 そうです。だからこそ、当社はさまざまな事業に抵抗なく取り組めます。もちろん、成功ばかりではありません。旅行会社から撤退したのは、10年前の熊本地震がきっかけでした。そもそも取引先のホテルにお客様を送客するために設立した会社で、順調でしたが、地震を機に役割を終えたと判断し、躊躇なく撤退しました。失敗と捉えることもできますが、その分、経験を積み、勉強をさせてもらったと考えています。
コロナ禍でも当社は一円の赤字も出しませんでした。当時、神田にあった東京事務所をいち早く閉鎖。工場の閉鎖・売却を急ピッチで進め、黒字を確保しました。6年ぶりに開設した東京事務所が、現在の東京本社です。事業を始めるのも撤退するのも早い。それが私の経営信条です。
―即断即決、即行動というわけですね。
中園社長 やめるにもお金がかかるのはたしかです。当社には赤字部門がないため、次への投資も素早く決断できます。ミルデューラ市のブドウ農園も、2024年から稼働している近見リネン工場の増改築も即行動した結果です。
創立50周年、業界活性化に向け新たな挑戦
―クリーニング業界全体の展望をどのようにお考えですか?
中園社長 無人化、自動化、セルフ化はどんどん進めるべきです。その先に来る人型ロボットの活用も、研究に着手すべき段階です。ホワイト急便の店舗も、現在の2~3人体制から人間1人とロボットで運営できるようになるかもしれません。
最近、ロボット技術の導入・開発を進めるタイのCPグループ日本法人代表と知り合い、クリーニング店向け人型ロボットの開発について話をしました。当社もいずれ投資すべき分野だと考えています。受付業務についても、さらなるDXが必要です。
―たしかにキャッシュレス化が進む現代社会とクリーニング業は、本来相性が良いはずです。
中園社長 グループ会社が開発したホワイト急便公式アプリは、会員登録数が間もなく100万人を超えます。アプリと連動するセルフ方式の受渡機も開発中で、現在は最終検証段階です。現行製品の10分の1程度の価格で提供し、当グループ以外にも使っていただきたいと考えています。また、今年4月からは、サマリー社が開発した衣類保管サービス「どこでもクローゼット」を本格的に導入しました。業界のスタンダードサービスになればと思います。

今年4月、ホワイト急便とポニークリーニングにより始まった「どこでもクローゼット」
―10年前なら考えられなかった取り組みのように思えますね。
中園社長 当社の取り組みが、クリーニング業界の起爆剤になってほしいですね。読者の皆さんに「ホワイト急便の中園は、なぜあんなに元気なのか」「こんなことまでやっているのか」と知っていただき、2代目、3代目、4代目の経営者の方に「自分も頑張るぞ」と思っていただきたい。
そのためには、クリーニング業はサービス業に変わらなければなりません。品質、納期、接客はもちろん重要ですが、それだけでは既存客の利用は維持できても、新規顧客の獲得や売上拡大にはつながりにくいのが現状です。私はクリーニング屋の息子として生まれ、「この商売をやっていてよかった」といつも思っています。固定客をつかんでいるから、あとは新規客をつかめばいい。そのためには、世の中の変化に敏感になり、ニーズを捉え、応えるために何をレベルアップすべきか考えることが重要です。
日本さわやかグループは今年で創立50周年、中園ホールディングスは創業65周年を迎えました。企業ブランドの寿命は30年という説から考えると、私自身、さらなる飛躍に向けて新たな挑戦をすべき時期だと捉えています。
―最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
中園社長 クリーニング業は、社会になくてはならない商売です。今、元気を失っている方には、諦めるのはまだ早いとお伝えしたい。私が、元気な中園ホールディングス、元気なホワイト急便の姿を見せることで、業界を活性化し、さらに良い人材が集まる流れにできればと考えています。近年、後継者不在による廃業が増えておりますが、業界の発展のためにM&A等でもお役に立てればと思います。
数年後、日本では多くの業界で労働力が不足するといわれています。その中で、クリーニング業には人が集まるような仕組みをしっかりつくりたいと思っています。
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