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コインランドリー刑事

テレビドラマに登場したコインランドリーの聖地を巡る旅(ツアー)ベスト10

藤原健一 (ふじわらけんいち)

コインランドリー洗濯天国 東京都町田市能ヶ谷621

LAUNDRY 7「事件、人生、そして政治まで。三つのドラマを洗ってきたランドリー。」

コインランドリー洗濯天国 東京都町田市能ヶ谷621

一軒でなんと三作品。
しかも、その三作品でランドリーの使われ方がまったく違います。
「レンタル救世主」(2016年・日本テレビ)
沢村一樹演じる明辺悠五が、人から依頼されれば何でも助ける「レンタル救世主」として奮闘するアクション&ヒューマンドラマ。
第1話では、百地零子らが危険な目に遭う場所として、このランドリーが登場します。
「凪のお暇」(2019年・TBS)
黒木華演じる28歳の大島凪。
周囲の空気を読み続ける生活に疲れ果て、仕事も、住まいも、恋人も、人間関係も一度リセット。
天然パーマの髪に戻し、人生の「お暇」を始めます。
このランドリーには凪とゴンが洗濯に訪れるほか、物語後半では凪と坂本龍子が、この場所を自分たちで運営することまで考えます。
つまりここは単なる背景ではなく、「これから自分は、どんな人生を生きたいのか」という凪の再出発とも結びついた場所なのです。
「銀河の一票」(2026年・関西テレビ)
黒木華演じる政治の世界を追われた秘書・星野茉莉と、野呂佳代演じる政治経験ゼロのスナックのママ・月岡あかり。
二人が東京都知事選へ挑む、異色の選挙エンターテインメントです。
劇中では五十嵐隼人が「よろず困りごと相談所」を開く場所として、この洗濯天国が登場します。
2016年には事件の現場。
2019年には人生をやり直す場所。
2026年には市民の悩みを聞く相談所。
同じ一軒が、10年の間に三つのまったく違う人生を受け止めています。



コインランドリー下石原二丁目店 東京都調布市下石原3-12-2

LAUNDRY 8「家庭教師が洗濯をする。登場人物の日常に最も近づける場所。」

コインランドリー下石原二丁目店 東京都調布市下石原3-12-2
「家庭教師のトラコ」(2022年・日本テレビ)


橋本愛演じる謎の家庭教師・根津寅子、通称「トラコ」。
彼女が向き合うのは、年齢も家庭環境も異なる三人の子どもと、その母親たち。
トラコが教えるのは、単なる受験勉強ではありません。
「正しいお金の使い方」などを通して、子どもと親が抱えている問題そのものに踏み込んでいく異色のホームドラマです。
第9話で、トラコが洗濯をする場面に使われました。
普段は強烈な個性で人の家庭へ踏み込んでいくトラコも、ここでは洗濯をする一人の生活者。
ドラマの中で華やかな名所ではないからこそ、登場人物にも「画面に映らない日常」があることを感じられるロケ地です。



LAUNDRYCIELBLEU調布富士見町店 東京都調布市富士見町2-22-13

LAUNDRY 9「家事をしないドラマで、家事の重さがいちばん目に見える場所。」

LAUNDRYCIELBLEU調布富士見町店 東京都調布市富士見町2-22-13
「西園寺さんは家事をしない」(2024年・TBS)

松本若菜演じる西園寺一妃は、仕事は大好き、しかし家事は大嫌い。
試行錯誤の末、ついに憧れの「家事ゼロ生活」を手に入れます。
ところが、松村北斗演じる年下のシングルファーザー・楠見俊直と、その幼い娘との出会いから、三人は少し変わった共同生活を始めることに。
「家族とは何か」「幸せとは何か」を描くハートフルラブコメディです。
第2話で、楠見が洗濯する場所として登場します。
仕事をしながら、幼い娘を育て、洗濯物も抱えるシングルファーザー。
「家事をしない」というタイトルのドラマだからこそ、コインランドリーで黙々と家事をする彼の姿には大きな意味があります。
西園寺さんが楠見親子を放っておけなくなっていく理由も、こんな日々の小さな光景から見えてきます。



コインランドリープリート三ノ輪 東京都台東区三ノ輪171

LAUNDRY10「洗濯機が壊れた日、人生まで思わぬ方向へ回り始めた。」

コインランドリープリート三ノ輪 東京都台東区三ノ輪171
「フェイクマミー」(2025年・TBS)


波瑠演じる花村薫は、東大卒、大手商社勤務という華々しい経歴を持ちながら、ある事情で会社を辞め、転職活動に苦戦している元エリート会社員。
そんな薫の前に現れるのが、川栄李奈演じるベンチャー企業社長・日高茉海恵です。
茉海恵は元ヤンキーという異色の経歴を持つ一方、6歳の娘・いろはを育てるシングルマザー。
娘を名門小学校へ入学させたい茉海恵は、抜群の学力を持つ薫に家庭教師を依頼します。
ところが、やがて持ちかけられるのは、とんでもない仕事。
「私の代わりに、母親として小学校受験の面接を受けてほしい」
こうして、まったく違う人生を歩んできた二人の女性による、秘密の“フェイクマミー(ニセママ)契約"が始まります。
母親という役割を他人が演じることはできるのか。
本当の家族とは何なのか。
「母親業のアウトソーシング」という大胆な設定から、嘘が嘘を呼ぶ騒動と、次第に生まれていく不思議な絆を描いたファミリークライム・エンターテインメントです。
コインランドリープリート三ノ輪が登場するのは、物語が始まったばかりの第1話。
自宅の洗濯機が壊れてしまった薫が、洗濯をするためにやって来るコインランドリーとして撮影されました。
この時点の薫は、まだ「誰かの母親を演じる」という、とんでもない人生へ踏み込んでいく途中。
エリート会社員だった過去を持ちながら、仕事を辞め、転職もうまくいかず、そして今度は自宅の洗濯機まで故障。
人生が思いどおりにならない時期の薫が、ごく普通のコインランドリーで自分の洗濯物が回るのを見つめています。
しかし、その後の彼女を待っているのは、家庭教師、小学校受験、母親へのなりすまし、
そして本当の家族とは何かを問われる日々。
薫の日常が、それまでとはまったく違う方向へ回り始めようとしていた場所にも見えてきます。
そして今回のツアーでは、同じ台東区の「コインランドリーオガワ」と見比べるのも楽しみの一つ。
浅草では小説家と美容師が出会い、諸葛孔明がラッパーを訪ね、三ノ輪では、のちに“ニセママ"となる女性が洗濯をしていた。
わずか数キロの間に、これほど違うドラマの世界が存在しています。

さて、今回の10軒ですが、2026年8月時点で全て営業中なのを確認してきました。
それぞれのコインランドリー所在地の自治体名はこうなります。
大田区、台東区、立川市、八王子市、町田市、調布市。
はっきり言って、すこしもシャレオツな場所ではありません。
ここから、コインランドリーという場所が、テレビドラマの中で少しずつ違った役割を担うようになってきたことが見えてきます。
1980年代後半から1990年代初頭にかけてのドラマには、六本木とか麻布などの高級マンションや洗練されたレストラン、華やかな職業など、視聴者の日常から少し離れた世界が多く登場しました。テレビの中には、現実よりも少しきらびやかな「憧れの生活」があり、私たちはそれを眺めながら物語を楽しんでいました。
それに対して、近年のドラマで存在感を増しているコインランドリーは、まったく反対の場所です。
先に上げた自治体名からも分かるとおり、住宅街や商店街の一角にあり、誰でも利用することができる。「紙兎ロペ」の背景画に使われるような、地味で、私たちの日常生活のすぐそばにある、洗濯物が乾くまで時間を持て余すだけの空間です。
しかし、ドラマの舞台として考えると、コインランドリーには実に多くの魅力があります。
まず、そこで「待ち時間を過ごす」理由があります。
この何気ない待ち時間が、ドラマでは舞台装置となり得ます。
偶然居合わせた二人が話し始める。
普段なら言わないことを口にする。
一人で考え事をする。
誰かを待つ。
思いがけない人物が入ってくる。
登場人物を同じ場所に自然に留めておくことができるため、コインランドリーは会話や出会いを描く舞台として、とても使いやすいのです。
さらに、コインランドリーは「公共の場所」でありながら、「私生活が持ち込まれる場所」でもあります。
そこにあるのは、その人が毎日着ている服やタオル、シーツといった生活そのものです。
家の中ほど私的ではない。
しかし駅や公園ほど匿名的でもない。
知らない人同士が同じ空間にいながら、それぞれの暮らしの一部を持ち込んでいる。
この微妙な距離感が、現代のドラマが描く人間関係によく似ています。
一人でいたいけれど、完全に孤独ではない。
誰かと同じ場所にいるけれど、必ずしも会話をする必要はない。
けれど、何かのきっかけで二人の人生が交わることもある。
「冬のなんかさ、春のなんかね」のような出会いの物語にも、「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」のような都会で生きる若者の物語にも、コインランドリーはよく似合います。
そして、「洗う」「乾かす」「再び着る」という行為そのものにも、物語を感じさせる力があります。
汚れたものを洗い、濡れたものを乾かし、もう一度身につけて外へ出ていく。
それは、過去を整理すること、気持ちを立て直すこと、誰かとの関係を考え直すこと、人生をもう一度始めることの暗示として利用されています。
だから同じコインランドリーでも、「凪のお暇」では人生の再出発を感じさせ、「みなと商事コインランドリー」では人と人がつながる居場所となり、「Tシャツが乾くまで」では失われた時間や人間関係を見つめ直す場所になるのでしょう。
そして、今回の旅で最も興味深いのは、ドラマと私たちの日常との距離が変わってきたことです。
かつてのドラマでは、「こんな場所へ行ってみたい」と思うような場所が物語の舞台になりました。
それに対して現在のドラマでは、「こんな場所なら、自分の町にもある」と思える場所に物語がやって来ます。
高級レストランや豪華なマンションであれば、テレビを消した瞬間に物語の世界から日常へ戻ります。
しかしコインランドリーは違います。
翌朝、家を出て少し歩けば、同じような店が本当にあるかもしれません。
その前を通ったとき、「この洗濯機の前でも、知らない誰かの人生が動いているのかもしれない」と想像すると、自分たちの日常の中に隠れていた物語が見つかって、少しだけ楽しいかもしれませんね。
他にも、ロケ地に使われたコインランドリーがあるか、見に行きたいと思います。
ここで一句。
「Tシャツが まだ乾かない あと100円」
一応「Tシャツ」って夏の季語ですかね。あと、乾燥機にTシャツ1枚だけ、とか、少量過ぎるのも乾かないですよ・・・

この記事の著者

藤原健一 (ふじわらけんいち)

1969年生まれ、宮城県石巻市出身です。


2002年から東京都内でコインランドリーを調べ歩いてきました。きっかけは母の介護でどうしてもサラリーマンを辞めなくてはなくなり、自宅で模型作家の仕事をするようになったのですが、病気の母とずっと一緒にいて、くたびれてしまったので、息抜きに外出する用事を無理やり作るため、どこでも良いので目標を決めて訪ね歩くのがいいな、また、すぐに制覇できるのではなく、永遠に訪ね歩けるものが良いな、と考え、たまたまその目標が東京都内の全てのコインランドリーだったからです。


その頃のコインランドリーは第3次ブームで、新しいお店がどんどん出来たり、古いお店がどんどん無くなったりと新陳代謝が激しかったので、つい先日行った場所が全く違う様相を呈していたりして、調査がどんどん楽しくなって行き、気がついたらあっという間に3,000軒を超えるコインランドリーに行ってしまってました。


その後、コインランドリーマニアとしてあるテレビ番組に出演して以来、講演や原稿を頼まれるようになり、その取材を通して業界関係者との交流も増えました。


ありがたいことに、ゼンドラの関さんとも、その中の出会いのひとつです。


求人広告を見て2018年からコインランドリーの清掃の仕事も始め、効率的、効果的な清掃方法や売上の伸ばし方にも詳しくなってきました。


この連載では、コインランドリー業界がより良くなるように、私の知識や経験を役立てたいと思います。 どうぞよろしくお願いいたします。

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