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スタッフがサポートする「半セルフ」強み 「高齢者対応5か条」掲げ、地域密着のインフラビジネス構築へ
第10回国際コインランドリーEXPO2026(2月12日~14日、東京ビッグサイト)にて行われた「コインランドリー店アワード」。全国のコインランドリー店から優秀店舗を表彰する同イベントには、今回も特色ある68店舗がエントリーしたが、その中から東京都板橋区のクリーニングメリー(㈱C&L、尾上有嘉子社長)が運営する「ランドリープレス板橋大山店」が最優秀賞に選ばれた。


クリーニング工場を縮小してコインランドリーを開設

㈱C&L 尾上有嘉子代表取締役
高齢者の多い地域で長年、クリーニング店を営んできた同社は、「地域に寄り添う衣場所(居場所)」として、コインランドリー併設を機に「高齢者対応5カ条」を策定し、積み下ろしサポートや声掛け等を実践。誰もが安心して利用でき、人と人がつながる場所になっている点が評価された。
同店を訪問し、クリーニングスタッフがサポートしながら運営するコインランドリーの稼働状況などについて尾上社長に話を伺った。
クリーニング需要縮小の打開策
東京都板橋区、北区、豊島区に「クリーニングメリー」5店舗を展開するC&Lはここ数年、事業再構築補助金をはじめ様々な補助金制度を活用して、工場では水洗機や乾燥機、ワイシャツ仕上げ機、包装機などの最新設備を揃え、さらに店舗では、ロボット受け渡し機やPOSレジなどを導入。最新設備により生産性を高めながら労力を軽減し、お客様に対してはより利便性の高い店へとサービスを向上させてきた。
しかし、長年続くクリーニング需要の縮小の影響は大きく、親の代からこの地で約30年営んできた同店の過去ピークの売上と比べ、近年は約30%ダウン。多彩な販促戦略で知られる同社であっても需要縮小の波に苦しんでいた。
その状況で同社は2023年、コインランドリーとクリーニングを併設したLAUNDRY PRESS×Merry豊島長崎店(東京都豊島区)をオープン。コインランドリーの開業支援を行う㈱アスファクトの直営店ランドリープレスと、クリーニングメリー直営店のコラボ店舗というスタイルだった。
すると、オープン2か月目にランドリープレスの売上が月100万円を超え、1年経過後には150万円まで伸びた。一方、コラボしたクリーニング部門の売上は初年度1000万円に届かなかったという。
コラボ店の管理をしながら、洗濯需要の変化を肌で感じた尾上社長は、「コインランドリーの集客の面白さ、クリーニング出店の難しさを実感した」といい、自社でのコインランドリー経営に踏み切った。

最近改装した窓際のカフェスペース

ランドリープレスの豊富なメニューを選べるタッチモニター

併設のクリーニング受付。いつでもサポートできるのが強み
洗濯知識活かしたコインランドリー
2024年11月、板橋区のクリーニングメリー本店工場をリニューアルしてランドリープレス板橋大山店をオープン。クリーニング工場の作業エリアを縮小し、コインランドリー併設店へと生まれ変えた。
同社では、コロナ前から産業クリーニング(ユニフォームの下請けなど)の仕事を請け負っているが、その仕事があっても繁忙期以外は14~15時あたりには工場の作業が終了。「借物件で毎月家賃が発生している状況で、機械設備を遊ばせてしまっていた」と尾上社長は語る。

スタッフのサポートにより高齢者も安心。

「高齢者対応5か条」

アワード最優秀賞の賞状と盾
「販促に強い当店でも、今の状況でクリーニング売上を回復させるのは難しい。ランドリープレスとのコラボを経験して、コインランドリーのほうが、お客さんが楽しんで利用している印象を受けた。美容院に行くのと同じような感覚なのかもしれない。家賃というコストの悩みどころに対し、事業再構築の事業としてコインランドリーを選んだ」(尾上社長)。
30年以上営むメリー本店は地域トップシェアで多くの顧客がついており、直営店を合わせたメール会員数は6000人にものぼる。そのクリーニングのメール会員にコインランドリーの販促をかけて、スタートダッシュは成功した。
尾上社長は「クリーニングと違ってコインランドリー業はこれまであまり販促はしてこなかったと思うが、この店ではメール会員が喜んでくれるような販促を小まめにかけている。クリーニングで培った販促で、コインランドリーの需要をもっと掘り下げたい。また今後、地域の洗濯屋として何を使命にしていくか、と考えると、クリーニングとコインランドリーが敵対するのではなく、従来のクリーニングサービスを主体として、そのクリーニングの知識を活かしながらコインランドリーサービスを提供していけば、地域の洗濯事情をより良くできるはず」と語る。
高齢者に寄り添った接客を徹底
クリーニングとコインランドリーにより地域の洗濯事情をより良くしていく。これが、今回アワードで最優秀賞に選ばれた同店のコンセプト「地域に寄り添う衣場所(居場所)」ということでもある。
高齢者が多い地域において、同店はこれまでもクリーニングで来店した高齢者に寄り添った接客を行ってきた。「以前からシニア割をしていることもあって高齢の顧客は多い。お年寄りが遠くからふとんとか重たい物を持ってきたら、次からは家に取りに行ったりといったことは各店で自主的にしてきたし、通り一辺倒のマニュアル接客でなく、子や孫のような感覚で優しく接することでまた来店していただいている」(尾上社長)。
そして、コインランドリー併設を機に「高齢者対応5カ条」を策定した。内容は以下のとおりだ。
①お声かけの徹底…機械の操作方法、洗い方のアドバイスなど
②重たい洗濯物の積み下ろし補助…洗濯機、乾燥機の出し入れをお声かけしてフォロー
③店内掲示でわかりやすく説明…見えづらい・聞きづらい方には大きな声で
④高齢者優先の椅子などの配置…取り出し時のカートやお待ち時間の椅子を心地良く提案
⑤緊急時の即時対応…体調不良、猛暑日の熱中症などにすぐ緊急対応する
「高齢者にとってコインランドリーはスマホと一緒で、興味はあるけど使い方がわからない。ここはクリーニングのスタッフがいるので、機械操作に迷っている人には声掛けして洗い方をわかりやすく説明している。スマホ教室と同様、コインランドリー教室をしているようなもので、操作を覚えたらランドリープレスはいろいろな洗い方を選べるのが特徴なので、それぞれが好みの柔軟剤とかあれこれ選んで楽しく洗濯している」という。
また、洗い方のサポートでとくに効果的だったのは、ふとんだという。「高齢者はこれまで、ふとんを洗う習慣がなかったので、やっぱり怖いという人も多いけど、スタッフがサポートして洗い方を知ったら、どんどん持ってこられる。クリーニングでふとんを集めようと思ったら割引したり集配したりと大変で、ふとんはもう自分で洗える認識が広がってコインランドリーの需要になっている」(尾上社長)。
高齢者対応では、「意外と乾燥機の利用が多い」ことにも気づいたという。年配の人は天日干し、というイメージがあったというが、利用者に聞けば、歳を重ねると身体の機能的に洗濯ばさみがうまく使えなくなるようで、それで乾燥機を使う人が多いのだという。これも日頃のコミュニケーションがとれているからこそわかる高齢者のニーズといえる。
スタッフがサポートする「半セルフ」
高齢者対応、ふとん洗いとともに、コインランドリー機器の稼働率をいかに高めるかにも力を入れている。
年末とか春先の週末とか、あるいは天候によって洗濯乾燥機の利用が集中し、機械が空くまで待たされることも少なくない。そうなるとお客様が他店に流れてしまうこともあるのだが、同店では「順番待ちカード」を作成し、カゴに品物を入れて順番待ちできるようにしている。スタッフが代金を預かり、機械投入を代行するサービスも行う。
また、混雑時は洗濯乾燥が終わった品物をスタッフが取り出し、「洗濯物取り出しカード」を添えてカゴに出しているほか、乾燥不足のふとんなどには追加乾燥をおすすめするカードも用意している。

ふとんも安心して洗えることを伝え、洗い方をサポートすることで、この時期(5~6月)はたくさんのふとんが持ち込まれている

混雑時に効果を発揮する「順番待ちカード」

機械の稼働率を高める「洗濯物取り出しカード」
「お客様は洗濯している間はどこか出かけたいから、順番待ちと出し入れを代行してあげれば売上を逃さなくて済む。コインランドリーはセルフサービスの事業だけど、どんな商売でも完全セルフは難しい。この周辺は民泊も増えて、外国人の宿泊者も来店する。無人では機械操作も難しいが、スタッフが少しサポートすればパネルをポチポチ触って操作できている。人がある程度介在する『半セルフ』にこそビジネスチャンスがあって、洗い方のコツをアドバイスしたり、出し入れを手伝ったりすれば売上も上がっていく」(尾上社長)。
稼働率アップのもう一つの策は、リネン品の受注だ。大手リネン業者があまり扱わない小ロットの需要を請け負い、病院の検査着や法人ユニフォーム、プロバスケチームのユニフォーム、タオルなどの洗濯にコインランドリー機器をフルに活用している。
「クリーニング工場は閑散期になれば早めにボイラーを切ってしまうので、コインのほうの機械を活用する。コインはあまり稼働しない時間帯もあるので、隙間にリネンを入れて洗い、手の空いたクリーニングスタッフがたたみ作業をしている」。なお、指定洗濯物はクリーニング工場で基準の洗いを行い、コインの乾燥機にかけているという。
こうした取り組みにより、コインランドリーの機械を遊ばせない、加えてクリーニングスタッフも遊ばせない高い稼働率のクリーニング・コインランドリー併設店となっている。
地域密着のインフラビジネスへ
工場をコンパクト化し、コインランドリー併設店にリニューアルして1年半が経過。これまでクリーニングを利用しなかった客層が来店し、コインランドリーとクリーニングを使い分けるなど、相乗効果を生んでいる。
コインランドリー経営について尾上社長は「セルフサービスで手がかからないと始める人も多いかもしれないけど、洗濯のことはすべて任せてという視点で、地域の生活に密着したインフラビジネスとして捉えたほうがいいかもしれない。地域のインフラと考えれば、明るくて安全でないといけない。薄暗くて電気だけでも明るくすればいいのにって思う店がいっぱいある。明るくて入りやすい居場所として、高齢者はじめ地域の人が安心して集まり、利用できる店でありたいですね」と語った。
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